流倒木を再資源化 - テーマは地産地消 ー
取材地:深浦町立木造高等学校深浦校舎
取材日:2015年7月17日
取材者:総務課 中川 信明
夏休み目前の7月17日、青森県教育委員会「ドリカム高校生人づくり推進事業」による、特色ある学校を目指した木造高等学校深浦校舎の活動を取材するため、やって参りました西津軽郡深浦町。
山あり海あり風光明媚、自然に恵まれた土地柄ですが、心配されたのが前夜に高知県室戸岬に上陸した台風11号の動向です。雨合羽を用意しなきゃ、持参したカメラは防水か?いやいや、では、ビニール袋か何かで覆う?などなど冴えない頭で考え思案したにも関わらず・・・、当日は見事な快晴、しかも最高気温33℃(暑い!)。
まずは、深浦校舎に到着です。
全校生徒は66名、全員が地元出身の正真正銘
「深浦っ子」、とのこと。
では本日、生徒達が行う活動とは、目的 とはなんぞや?
白神山地・白神岳を源流に、深浦町で日本海に注ぐ笹内川(さざないがわ)。その流域に散在する流倒木を集めます。
えっ、どうして?
流倒木は、河川の堤防を削って道路を崩壊させ、橋などで塞き止められて洪水を発生させる危険な存在で、さらには海へ流失して航行する船舶と衝突、重大な事故を招く原因となるそうです。
つまり、「川の邪魔者」なのだ!
では、流倒木回収のため、笹内川へ向かって
出発しましょう。
前日(16日)には、校舎から歩いて行ける近距離にある、ニッコウキスゲの大群落や271種の変化に富んだ植物相を持つことで知られる「行合崎(ゆきあいざき)海岸」のボランティア清掃を行った深高生たち。連日の作業に、頭が下がります。
あっ!ここで、重要なお知らせが…
後半に記者を襲った悲劇?により、画像は記者撮影のもの、そして「白神の生き物を観察する会」ご提供のもの、バラエティに富んだ?内容で掲載します。
笹内川流域に到着。 吉田健校長の挨拶に続き、深浦町役場・総合戦略課・松沢課長から作業説明。
引き続き…
「白神の生き物を観察する会」代表の浜田哲二さん (高知県出身)からもお話しがあります。傍らの女性は 奥様の律子さん(岡山県出身)です。 お二人とも、元は朝日新聞・読売新聞の記者をされており、 世界自然遺産・白神山地に惚れ込み、深浦町に移住されたのだそうです。
それでは、作業開始!!
サワグルミ、ヤナギ、ミズキ、ブナ、トチノキ 等の約10種類、今年の流倒木はクルミ・ヤナギ系が多いようです。
適度な長さに裁断され、積み上げられたものを運搬用のトラックに運びます。
生徒・教職員、手渡しリレー方式でドンドン作業を進めます。
ところが、全体の動きとは明らかに違う行動 をする女子が2人…
「君たち、何してるの?」と尋ねると、「取材です!」。
むむっ、ライバル出現か?(ここで、記者魂に火が付く=嘘)
実は、本日の活動を「朝日中高生新聞」へ寄稿するため取材をしていた工藤七瀬さん、斉藤桃子さん(ともに3年生)。お二人に敬意を表し、記念に1枚「ハイ、チーズ!」
左・工藤さん、右・斉藤さん
結果、見事にピンボケです(スマン・・・涙)。 写真はこんなのですが・・・ お二人とも、深浦美人です!!
そうこうしているうちに、この場での作業は終了。
小沢浩太さん(2年)「あっという間に終わった。でも、疲れた」。確かに、予想に反して短時間で終わりましたが・・・。
本当に、コレで終わり? しかも、準備してある材木をトラックに積んだだけでは…
この準備されていた流倒木は、地元の建設業者である ㈱ホリエイ さんが、青森県から依頼された土木工事に伴い撤去したものを、無償で深浦校舎に譲渡してくださった、のだそうです。学校・自治体・地元住民等による、「官民一体」での活動であることが伺われます。
謎のFCバルセロナ軍団(ユニフォーム)も気になるし…(君たち、サッカー部か?)
しかし、もちろんこれで終了なワケもなく「では、移動します」の掛け声とともに、一行は笹内川の下流へ再移動します。
←生徒が下りている傾斜、大雨による洪水で崩壊した路肩補修工事の、未完成部分です。
さきほどまでとは打って変わり、川岸まで 近寄ります。手付かずの流倒木が散在しています。
浜田さんから、流倒木が及ぼす影響についてのレクチャーを受け、作業再開です。
気温の上昇が、気になりますが・・・
さぁ、ここからが本番ですよ!
男子は太い樹木を数名で、女子は細い樹木を運びます。と簡単に記してみたものの…。 生木は細くても、もの凄く重い、のだとか。試しにチョットだけ持ち上げてみましたが・・・、確かに重い。頑張れ、深高生!! そこで、彼らは考えます。そして、気付きます。漠然と運ぼうとしても、思いどおりにならないことを。グループ単位で運搬方法を検討します。
ロープを絡めて、引きずってみようか? ロープを巻きつけてみたものの・・・ (引っ張るのかと思いきや・・・?)
ゴロゴロと、転がしてみたら?
やっぱり持って運んだほうが早いんじゃない?
謎のFCバルセロナ・コンビも 息を合わせて運びます。 メッシとネイマールか? じゃあ、スアレスはいずこに?
おそらく、この頃に最高気温33℃。軽い脱水症状と思われる体調不良者が1名発生。救護班のワゴン車へ、大丈夫か?
運搬トラックの待つ、護岸壁の下まで ラスト・スパート!
約2時間半、笹内川での回収作業終了!
でっ、この流倒木、どうするの? 集めて終わりか?
いえいえ、回収した木材を「ウッドチップ」にするのです。
誰が? どうやって?
高校生の運動量に羨望を感じ、逞しい生命力 に圧倒されつつも、懸命にカメラのシャッター を切ります。 (オジさん記者は、もうヘロヘロ状態…)
この作業にも、助っ人がいます。能代市の製材業者 ㈱鈴光 さんが、無償でチップ化してくれます。2tトラック3台に載せられた流倒木は一路、能代市へと向かいます。
生徒・教職員の一行は、昼食・休憩場所「アオーネ白神十二湖」へ、記者は一足早く校舎へ戻ります。
「天気も最高。景色も抜群!」 「101でラーメン食べて、 おなかも満腹っ」
などと一人悦に入りながら、深浦校舎への道すがら、余裕で風景写真なんかを撮影しています・・・が
直後に訪れる悲劇を、知る由もなく
校舎で、一行と合流。ウッドチップを積んだトラックも到着。午後の作業開始! さぁ、午後も張り切って、取材するぞ!、とデジカメの電源をオンしたら・・
あれっ?動かない…、マジっ!? バッテリー「0」って…
実は、当初の取材対象は午前の部だけでしたが、「是非、午後の部も取材させてください」と志願したのでした。 それにも関わらず、カメラが…(本日、二度目の・・・涙)
午後の部、どうすんの? 帰る? 今さら「これで帰ります」って…
恥を忍んで、前出の浜田律子さんにお願いしてみました。
記 者「あのぉー、初対面にも関らず、不躾なお願いがあるのですが・・・」
律子さん「どうしたの?」
記 者「どうやら、カメラのバッテリーが…。素人カメラマンなもので…」
律子さん「あぁ、よくあることですよ(笑)。午後の部の写真は、後日提供します。」
ヤッたー、貴女は神様? 深浦で女神に遭遇か!?
ということで、ここからの画像は「白神の生き物を観察する会」提供写真となります。
2tトラック3台分のウッドチップを、地面に敷いたブルーシートに降ろします。 男子はスコップを使って麻袋(10㎏)へ、女子は小さな透明な用具で土嚢袋(3㎏)にチップを詰めます。
んっ?何だ、その用具は?
生徒たち自らが考案した、ペットボトルを再利用した「特製シャベル」です。賢い!
その材料とは、お父さんの晩酌の 大○郎か?それとも、ビッ○マンか?(笑)
詰めては運び、詰めては運びを繰り返します。
そして、ついに謎のFCバルセロナ軍団の 正体が明らかにっ!!
実は、3年1組(17名)の「クラス・ユニフォーム」、とのこと。サッカー部ではない そうです。
校長先生を始め、先生方も作業を手伝います。
上級生は下級生をイジリつつも、作業の段取りを教え、男子は女子に代わって運搬を受け持つなど、微笑ましい光景も見受けられます。
逞しい!さすが、深浦男子!
校舎脇の片隅に積み上げられたウッドチップは、 麻袋が205個、土嚢袋が320個になりました。
ところで、ウッドチップ、どうするの? 何に使うの?
地元の、県内外に知られる観光地・十二湖の遊歩 道に敷き詰めるのです。一昨年までは秋田県等から 町がウッドチップを購入していましたが、
「白神山地の植物以外の木も含まれているのでは?」 「外来種の種子や病害虫なども持ち込むことになるのでは?」 そのような懸念もあり、不用とされ、様々な弊害 が心配される流倒木を回収、有効な資源と捉えてウ ッ ドチップ化、観光名所に活用。一石二鳥ならぬ、 一石三鳥のアイディアになったのだとか。 サワグルミやヤナギは柔らかい樹木のため、耐久 こそ劣るものの、クッション性は抜群の即戦力。ア スファルト等とは違い景観を損うことなく、もちろ ん環境にも優しいのです。
数ある取材候補対象校から深浦校舎を選択したのは記者(よって、自らやって来ました)でしたが、白神山地における自然環境と流倒木の関わりについての考察、地域の活動に参加して高校生が協力できることを理解し、我が町の将来に思いを馳せる、そして、防災意識を高める。そのような崇高な理念に基づいて実施された活動なのだということを知りました。
深浦町役場、白神の生き物を観察する会、県鰺ヶ沢道路河川事業所、津軽森林管理署、㈱ホリエイ、㈱鈴光、そして浜田さんご夫妻、各関係団体のご協力はもちろんですが、やはり主役は深浦校舎の生徒たち。
本当に高校生か?(失礼!)と思うほど、嬉々として、笑顔を絶やさず楽しそうに作業する姿に「今時の高校生も、捨てたものじゃないな」と、オジさん記者は感心しきり。久しぶりに清々しい気分になれました。深浦校舎のみなさん、ありがとう!
聞くところによると、進学・就職と、卒業後はほとんどの生徒が町外へと巣立つことになるのだとか。これほど魅力的な故郷、めったに無いよ!いつまでも忘れずにいて欲しい、と願うばかりです。
そして、禁断の「取材後記」
なぜ、禁断なのか? それはね…
9月18日、深高生が額に汗して用意したウッドチップを、十二湖の遊歩道に敷き詰める予定日。記者は職場に無断で、いやっ訂正、夏季休暇を利用して再び深浦町へ。
だって、この作業が本当のメインイベントなんだものぉー…
勢い勇んで学校玄関へ。事務室の方に導かれて現れた吉田教頭先生、申し訳なさそうに曰く、
「あらあら、遠い所からわざわざ。でも、残念ながら雨のため中止です。」
えっ、マジか?
10月5日、今回は事前に吉田教頭からご丁寧なご案内を頂戴したにも関わらず、諸般の事情により?記者不在のまま(笑)、町立中学校の生徒も加わり、敷き詰め作業は無事終了。東奥日報等に掲載されました。作業終了後早速、居合わせた観光客に感謝された、とのこと。これで、めでたし、めでたし!…か?